齊藤総領事挨拶(メールマガジン8月号)

令和5年9月20日

皆さまこんにちは。

それぞれに夏を楽しまれて、さぁ秋の陣!といったところでしょうか?(天気のことはもう書かないようにします、笑)もちろん、夏が書き入れ時で休む暇なんてなかった~という方もいらっしゃると思います。私は昨年に続いて東京から訪ねてきてくれた中二の次女と旅行に行くなどしてリフレッシュして参りました。

私にとっての今月のハイライトは何といっても当地での広島平和式典でした。例年モントリオール植物園内の日本庭園で開催されてきたのですが、コロナ禍で招待客を入れられない年が続き、ようやく4年ぶりに大勢の参列者を得て厳粛に執り行われました。78年前に広島に原爆が投下されたまさにその時刻、当地の8月5日19:15にモントリオール市議会議長とともに平和の鐘を撞き、皆さまと一緒に黙とうを捧げました。市当局はもとより、連邦議員や米国総領事を含む領事団、日本商工会や日系文化会館の関係者も参列してくださり、モントリオール市主催の行事とはいえ、私としても感謝の気持ちでいっぱいでした。

例年この時期に語学研修のために当地を訪問していた広島市の高校生たちも久しぶりに来訪を果たし、全員が式典に参列して、代表者が平和宣言を読み上げました。一行の当地到着直後に総領事館で話をする機会があったのですが、その時は時差ボケもあり眠そうな生徒もいましたが、この日はみなキラキラした目をしていて、まぶしいくらいでした。次代を担う子ども達が様々な経験を積み、視野を広げていってくれることはとても頼もしく感じます。

先日領事メールを送信しましたが、以前ここで書いた州法96号に関する情報提供をお願いします。動き出すのに少々時間がかかってしまい恐縮ですが、州法を順守しつつも、在留邦人の方々が業務や生活で感じる不便を少しでも軽減していきたいというのが総領事たる私の着任以来の願いであり務めです。これまでに実施した何回かの申し入れで、州政府や州議会議員に働きかけていくに当たっては、具体的な事例を提示することがとりわけ重要であることを痛感しているところ、これまでよりも広く皆さまにお声がけするものです。総領事館のドアはいつでも開かれていますので、メールではなく会って伝えたいという場合はどうか遠慮なく申し出ていただくようお願いします。

早くも日常に溶け込んだかの感があるモントリオールのREM (Réseau Express Métropolitain、通勤通学電車といったところでしょうか)ですが、7/31の正式開業直前の週末に無料開放されたので試しに乗ってみました。日本であれば始発から「撮り鉄」を含めて大混雑するのでしょうが、モントリオールは初日の土曜日の朝ならまだ閑古鳥が鳴いているのではないかと考えてのんびり中央駅に行ってみると(それでも9:00前には着きました)、なんと行列しているではないですか!かなり遠くに見える列の先頭は地下ホームに吸い込まれていっているようでしたので、素直に並びました。

列が進むにつれて並ばずに地下に降りていく人たちの姿が目に入り、「なぜきちんと規制しないのだ!」と内心プリプリしていたのですが、引き続きおとなしく並んでいました。ようやく先頭近くにたどり着いたら、実はその列は乗車証明のスタンプをもらうためであることが判明し、さっさと離脱して地下ホームに向かいました(私はモノを集める趣味はありません)。そして、なにごとも先入観を持たずに自分できちんと確かめなくてはいけないなぁ、との認識を新たにしました。

モントリオールに限らずいろいろな国の街角で、お店でもないの長い列ができていて、人々が吸い込まれていく様子を目にすることがありますが、「これは何の列ですか?」と聞きたいのを抑えて通り過ぎるのに多少努力が必要な私です・・・。ちなみに、終点まで往復してお昼前に戻ってみると、スタンプをもらおうがもらうまいが列に並ばなくてはいけないほど、物見高い人々が押し寄せていました。

車内では皆興奮した面持ちでしたが、高齢者のグループが多くて少々意外でした。終点で一旦降りようかと思いましたが、車窓からまた長蛇の列が見え、たぶんスタンプのためではなかったので、また並ぶのは勘弁・・・とばかりにそのまま折り返しました。復路の車内にはなんといわゆる「鉄ヲタ」のマニアックなケベック人が先頭車両の最前部に陣取っていて、REMやVIA Railについて声高にいろいろと解説していました(もちろん写真も撮りまくっていました)。周りの乗客には完全に聞こえているにもかかわらず、誰一人として反応しなかったのが印象的でした(こちらではいつもならすぐ会話が弾みますよね)。「おたく」とそうでない人の「共存」はどこの国でもそう簡単ではないのだなぁなどと、どうでもいいことを考えているうちに列車は無事にモントリオール中央駅に戻ってきました。

正式開業した途端に三日連続してトラブルに見舞われたことはモントリオール在住の皆さまはご存じのとおりですが、その後は順調に運行しているようです。私の執務室から往来するREMの姿が見えるのですが、パソコンの画面に疲れて遠くを見る際にはつい「がんばれ!」などと心の中で声をかけてしまいます(元鉄道少年です)。

レストランでのチップについてこれまで何回か書き散らし、我ながらちょっと品がないかなと少々モヤモヤしていたのですが、先日仏語系ニュースで最近のチップを巡る話題を取り上げていて、やはり多くの人の関心事項なのだと胸をなでおろしました。クレジットカード用の端末を持ってきてくれたお店の人がそのまま脇に立って、私がチップの額を打ち込む姿をじっと見降ろしていても、もはや動じなくなりました。

また長くなりましたが、最後にもうひと言。今般東京から帰国命令が届き、9月下旬に離任することになりました。二年弱の任期ということになり、まだまだやり残したこと、お会いしたかった方、親交を深めたかった方が多いのですが、これも外交官の仕事の常ですので、引き際を弁えて後任にバトンタッチします。送別会や引越作業でグロッキーになっていない限り、来月も最後となる挨拶文を執筆しますので、ぜひご期待下さい。あ、余計なお世話でしたね・・・。

在モントリオール日本国総領事
齊藤 純