齊藤総領事挨拶(メールマガジン5月号)
皆さまこんにちは。
連休が明けて、寒さ(庭いじりをする方にとっては霜・・・)への警戒もそろそろ解いてよい頃でしょうか。モントリオール市内には観光バスも見かけるようになり、いよいよ観光シーズン到来のようです。今年の夏はコロナ前を超える勢いで観光客が押し寄せる見込みだとニュースで言っていました。モントリオールは7~8割が米国からだそうで、F1GPやジャズフェスティバルに大挙してやってくるのでしょう。観光と言えば、先月あたりからやたらと国内各州や町、さらには米国東海岸の一部の州の観光CMをテレビで見かけるようになりました。いずれも短編ながらも行ってみたくなるような魅力的なものです。日本でそういうCM見たかなぁ・・・とふと思いましたが、JRはよく流していましたね。
先日公邸の近くの森を雪が完全に溶けた後初めて散策しました。4月初めの雨氷の被害が見るからに甚大で、あちこちに倒木や折れた枝が転がっていて痛々しかったです。これも森の新陳代謝の一環と言えなくもないのでしょうが、住宅街ではすべて片付けられて概ね以前の様相を取り戻しているだけにギャップに驚きました。そして道路も家もどこもかしこも工事です・・・。道路にはあちこちでオレンジと白のコーンが立っていますね。公邸の近くの、昨年雪がない間ずっと工事をしていて雪が降る直前にようやく完成した道路にもまた穴を開けています。すぐ近くの邸宅ではなんとプール設置工事が始まり、昨年は道路工事でずっと我慢していた騒音が別の形で朝早くから迫ってきて正直ゲンナリです。
各種行事が目白押しで、特に5月はアジア月間ということで日本関連を含め様々なアジアにまつわる催しが連日開催されていて、楽しく忙しくしています。これまで当館の「レーダー」では捉え切れていなかった日本に関連した多くの事業者、芸術家、アスリートの方々との出会いがあり、当地にて日本を代表している一員としては大変頼もしくまた心強いです。そうした中でも特に日本の「食」への関心は高まる一方です。着任以来あまり食べ歩きはしていませんが、これまで世界各国に駐在したり出張や旅行で訪れてそれなりにいろいろな食文化に触れています。当地に限らず、レストランに入って懐かしの各国料理をメニューに見つけて喜んで注文してみると、想像と違う品が出てくることも結構あります。私としてはその料理の本場で食べた味が懐かしくて注文するのですが、多くは地元風にアレンジされていたり、こうした方がおいしいだろうとの善意(?)で手が加えられています。かなりがっかりと言わざるを得ません・・・。その意味では、世界各国のお店で提供されるsushiも、日本で食べるたとえば江戸前の鮨とはだいぶ違うものが出てくることがままありますが、これは鮨ではなくsushiなのだ、と思って地元の人たちがどういうものを好んで食べているのかを知る機会になっています。翻って日本でよく出る納豆パスタなど、イタリア人の目にどう映るのか聞いてみたい気がします。
アジア月間のとある行事に出て気づいたのは、いわゆるアジアン・ヘイトがいまだに根強いという認識です。スピーチをする議員や政府関係者が、アジアン・ヘイトを撲滅しなくてはならない、と力強く語るのは本来悲しむべき事態です。総領事館としても引き続き在留邦人の皆さまへの注意喚起を行い、必要に応じて関係当局への働きかけを行って参ります。ヘイトかなと思う事案を見聞きしたら、総領事館にも一報願えると助かります。
比較的はっきりとした四季があり、昔から季節の節目や行事を大切にしてきた日本人として、ここでの仕事においてもこの点に意を用いています。こどもの日にかけて、今年も公邸前のポールに日の丸とともに鯉たちを泳がせていたのですが、晴れた日には道行く人が写真を撮っていました。日本を感じてもらえたものと思います。公邸のお客様にお出しする料理にもできるだけ旬の素材を使うようにしていて、今ならオマール海老は言うまでもなく、こごみ(Tête de violon, Fiddlehead)や筍も好評をいただいています。
総領事館には人事異動に特段「シーズン」はないのですが、最近数人入れ替わり、ついに東京から来ている館員についてはgender parityを達成して男女同数となりました。まことに喜ばしいことで、この面で特に進んでいるカナダにおいてそれが成ったことで、ようやく少しは胸を張れる状況に辿り着きました。新たなメンバーともども一層職務に精進して参ります。
それでは、どこへ行くか、何をするか、迷うほどの選択肢が出てきたこれからの季節を皆さまが楽しまれることをお祈りしています。
在モントリオール日本国総領事
齊藤 純
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